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殺人

人の生命は、何にも代えがたい重要なものであり、刑法においても、人の生命を侵害する行為は、厳しく罰せられます。

人を殺す犯罪というと、殺人罪を想定される方が多いと思います。

殺意を持って、人を殺した場合、殺人罪に問われます。

殺人罪の法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役刑となっています。

死刑も定められている殺人罪は、非常に重い罪です。

他方、殺意を持って人を殺しても、殺人罪よりは軽い刑が定められている罪もあります。

例えば、自殺願望のある者から、殺して欲しいと依頼されて殺害した場合、嘱託殺人罪が成立します。

また、無理心中のようなケースで、被害者の同意を得て被害者を殺害した場合、承諾殺人罪となります。

嘱託殺人罪と承諾殺人罪を総称して、同意殺人罪と呼ばれており、同意殺人罪の法定刑は、6月以上7年以下の懲役となっており、被害者が死ぬことに承諾している点から、殺人罪よりも軽い刑となっています。

殺人事件発生からの流れ

送検・勾留まで

とある路上で人が刺されて死亡した。

このようなニュースは、しばしば耳にするものです。

このような事件が起こった場合、通行人が警察に通報し、警察官が現場に臨場し、犯人を検挙するために、防犯カメラ、現場に残された遺留物、痕跡、被害者の人間関係等、様々な捜査を尽くし、犯人逮捕に至ったとします。

逮捕された被疑者は、警察官からの取調べを受け、警察署の留置施設に留置されます。

そして、逮捕から48時間以内に、検察庁に送致され、検察官は、被疑者送致から24時間以内に勾留請求をします。

勾留請求されると、裁判官によって勾留決定がなされ、勾留請求された日から最大20日間、引き続き、警察署の留置施設に留置されます。

殺人罪は、前述のとおり、重い刑罰が予想される重罪であり、類型的に逃亡のおそれが認められるといえ、逮捕後の勾留を防ぐことは困難でしょう。

もっとも、勾留されたからといって、殺人罪での起訴が確定しているわけではありません。

弁護活動の結果、不起訴となった事例もありますし、殺意が認められず、殺人罪ではなく、傷害致死で起訴されることもあります。

起訴から裁判まで

捜査段階で、勾留されたままの状態で起訴されると、起訴後も当然に勾留状態が続きますが、保釈請求も可能です。

保釈とは保釈金を収めることを条件として、一定の制限はあるものの、身柄の拘束を解かれる制度です。

保釈請求を行うと、裁判官が検察官の意見も聞いた上で許否を決定します。

ただし、殺人や放火など、重大な犯罪の容疑で起訴された場合、裁判所は基本的に保釈を認めません。

殺人罪は、裁判員裁判の対象事件です。

裁判員裁判では、3人の裁判官と6人の裁判員に対して、被告人が殺害行為に至ってしまった背景事情や動機について、情状酌量の余地があることを理解してもらうための弁護活動を行います。

また、被害者の遺族にできる限りの謝罪と被害弁償を行った結果について、裁判所に証拠として提出し、情状酌量を求めます。

殺人罪で有罪になった場合、長期の服役を覚悟しなければならないケースが多いでしょう。

もっとも、介護疲れの結果、殺害を決意したが、殺人は未遂に終わった事案等、殺人罪でも執行猶予が付くこともあります。

例えば、以下のような事情がある事案です。

被告人は、長年に渡る母親の介護疲れからストレスを募らせ、このような生活が続くのは耐えられないと母親の殺害を決意した。

母親が被告人との同居及び被告人の介護を受けることを強く望み、介護施設への入所を母親が強く拒絶しており、母親と生活を別にするという手段は、被告人にとって、現実的には相当困難だった。

被告人は、被告人宅の母親の居室において、ベッドで横になっていた母親の腹部に馬乗りになり、母親の頸部にドライヤーコードを巻き付け、強く締め続けた。

被告人は、母親の苦しむ姿を見て、自己の意思で犯行を中止したため、母親を殺害するには至らず、全治1か月の傷害を負わせるに留まった。

犯行後、被告人は、自首をした。

被害者である母親は、被告人の処罰を望んでいない。

以上のような事情のもと、被告人は、懲役3年・執行猶予5年(保護観察付)に処せられました。

以上は、殺人が未遂に終わった事案ですが、いわゆる介護殺人であれば、殺人が既遂に至ってしまっても、事情によっては、執行猶予が付される事案もあります。

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