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「痴漢」に関するお役立ち情報
痴漢は会社を必ず解雇される?懲戒解雇を防ぐ方法
1 痴漢で会社を解雇されるかは就業規則による
電車内で痴漢事件を起こしてしまった場合、刑事処分がどうなるかとともに、会社に事件のことが発覚している場合、会社で働き続けることができるのかも重要です。
痴漢に限らず、犯罪行為を行った場合、会社で働き続けることなどできなくなると思うかもしれませんが、会社から解雇されるとは限りません。
会社から解雇されるかどうかは、まず就業規則の規定を確認することになります。
通常、民間企業では、懲戒事由として「刑罰法規の適用を受け、又は刑罰法規の適用を受けることが明らかとなり、会社の信用を害したとき」といった規定を就業規則に設けています。
そして、電車内での痴漢といった業務と無関係な犯罪行為であっても、懲戒解雇を含む懲戒処分がなされる可能性はあります。
しかし、就業規則において犯罪行為を行ったことを解雇事由にしていれば、いかなる犯罪行為の場合にも従業員を解雇できるわけではありません。
労働契約法第16条には、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されています。
私生活上の電車内における痴漢行為は、業務とは無関係であることから企業秩序に与える影響も限定的であり、会社による懲戒解雇が裁判上有効と認められるケースは少ないのではないかと思われます。
2 痴漢の解雇が認められるケース
痴漢をしたことによる解雇が認められた裁判例を紹介します。
鉄道会社に勤務する男性社員が、業務外で電車内での痴漢行為に及び、起訴され、正式裁判となった結果、懲役4月、執行猶予3年の有罪判決を受け、その後、会社を懲戒解雇されたという事案があります。
この事案について、裁判所は、懲戒解雇は有効と判断しました。
裁判所が、懲戒解雇を有効と判断した理由として、①被害者に大きな精神的苦痛を与える点から、痴漢行為が決して軽微な犯罪とは言えないことを前提として、当該社員は、電車内の乗客の迷惑や被害を防止する立場にある鉄道会社の社員であり、従事する職業に伴う倫理規範として、痴漢行為を決して行ってはならない立場にあったこと、②今回問題となっている痴漢行為を行う約半年前にも痴漢行為を行い罰金の処罰を受け、鉄道会社から昇給停止及び降職の処分を受け、今後、同様の不祥事を発生させた場合は、いかなる処分にも従うので、寛大な処分をお願いしたいとの始末書を提出していながら、再び痴漢行為により検挙されたことを挙げています。
3 痴漢の解雇が不当解雇だと判断されるケース
次に、痴漢行為をした鉄道会社の男性社員に対する諭旨解雇が、無効と判断された裁判例を紹介します。
裁判例が考慮した事項は、①当該社員の行為は迷惑防止条例違反であり、当該社員に課された刑事罰について罰金20万円にとどまったこと等から、悪質性が比較的低い行為であったこと、②本件が報道される等して社会的に周知されることはなかったこと等からすれば、企業秩序に与えた悪影響の程度は大きいものではなかったこと、③当該社員の勤務態度に問題はなく、本件処分以前に懲戒処分を受けたことはなかったこと、④被害女性との間に示談を成立させようと試みたこと等です。
このように、鉄道会社の従業員であっても、痴漢行為に対する刑事罰が罰金に留まったり、過去に懲戒処分歴が無かったりした場合は、懲戒処分としての解雇が無効とされています。
4 痴漢での解雇でも退職金は受け取れる可能性がある
懲戒解雇の場合、退職金は不支給とするといった規定が就業規則に定められている場合があります。
そして、そのような定めがあり、痴漢行為で懲戒解雇された場合、退職金も不支給となるのが当然とも思われます。
しかし、退職金は、功労報酬的な意味合いを持つものといえますが、痴漢行為によって、それまでの会社への貢献が全て無に帰すと考えるのは酷であることもあるでしょう。
上述の「2 痴漢の解雇が認められるケース」において、痴漢行為を原因とした懲戒解雇が有効とされた裁判例を紹介しましたが、当該裁判例においては、当該従業員の痴漢行為がそれまでの勤続の労を抹消する程の強度の背信性を有するとまではいえないと判断し、退職金については、3割にあたる金額の支払いを会社に命じています。
5 痴漢で会社を解雇されないためにすべきこと
痴漢等、犯罪行為をしてしまった従業員がいる場合、会社は、当該従業員に対して、当該犯罪行為についての処分結果の報告を求めることが多いと思われます。
そして、処分結果は、不起訴、略式命令による罰金、正式裁判による起訴の3つの可能性がありますが、いうまでもなく、不起訴となることが最良でしょう。
そして、不起訴となるためには、被害者と示談し、被害者から許しを得ることが必要となることが多いでしょう。
被害者と示談することは、刑事手続上、不起訴となって前科が付かない可能性を高めるだけでなく、会社にから懲戒解雇等の懲戒処分をされる可能性を低めることにもつながります。
6 痴漢で解雇された際に弁護士に依頼するメリット
仮に、痴漢を理由に懲戒解雇された場合、裁判例に照らして、当該懲戒解雇が妥当であるかどうかを弁護士ならば判断可能です。
上述したように、私生活上の痴漢行為を理由とした懲戒解雇は、裁判所が無効と判断することも十分にありますし、仮に、懲戒解雇が有効でも、退職金の支払いが命じられる例があることも前述のとおりです。
そして、裁判の結果、懲戒解雇が無効と判断された場合、会社と係争中であるため働くことができなかった分の給与を支払ってもらうことが可能となる等、労働者側にとって、大きなメリットとなるでしょう。
7 会社に解雇されたくないなら弁護士法人心までご相談を
痴漢行為をしてしまった場合、弁護士に相談し、弁護士に被害者対応、会社対応のいずれも任せた方がよいでしょう。
先ほど、痴漢を理由に会社に懲戒解雇された場合、弁護士に依頼するメリットについて述べましたが、懲戒解雇を争う裁判をする場合、労働者側に有利な結果となっても、結果が出るまでに時間がかかりますし、解雇が無効と判断されたとしても、裁判までして争った会社にて勤務を続けることは、現実的には困難でしょう。
ですので、会社から何らかの処分を受ける前に、弁護士に依頼して、被害者と示談し不起訴処分となることによって、会社から懲戒解雇処分などの重い処分を受けないようにすることが大切です。
また、例えば、会社側は、検察官による処分がなされるのは、何か月も時間がかかる場合がある等、刑事手続の実態をあまり理解していないことが多いでしょうから、そのようなことを弁護士から説明し、会社側の疑問点や誤解を解消することも重要でしょう。
弁護士法人心には、痴漢事件における被害者対応及び会社対応について経験豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひご相談ください。
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